地域福祉権利擁護事業活動事例(2)
事例(2)親も子も認知症の高齢者
Fさんは、94歳の認知症のある女性です。子どもが3人いて、その長女Gさんと暮らしていますが、Gさんにも認知障害がでており、2人の通帳や現金が度々なくなっていました。
そんなFさん親子の様子を心配しながら見守っていたケアマネジャーでしたが、ある日、Fさんがクモ膜下出血で緊急入院したときに、たまたまヘルパーが預かったバッグの中に多額の定期預金証書が入っており、その保管に困っての相談でした。
~最初の訪問~
Fさんが退院してすぐ、説明に伺いました。
Fさん親子の定期預金の保管についての相談でしたが、日常の様子から、「金銭管理・生活支援サービス」の必要性も感じられ、サービスの説明をしたところ「あたしゃーできんから」というFさんのことばに、Gさんも「うん、うん」とうなづかれました。
定期預金の存在自体、2人とも良く覚えていないようでした。
~ご近所からの侵害?~
ケアマネジャーによると、2人とも被害妄想があるとのことでしたが、FさんもGさんも隣室の少年が盗みに来ていたと言われていました。
でも隣室は既に引っ越しており、盗みが事実だったかどうかは今となっては確認できません。
~権利擁護サービスが始まってから~
2人との契約が成立したので、定期預金は「財産保管サービス」としてお預かりし、「金銭管理・生活支援サービス」でそれぞれ月に1回、世帯としては月に2回の訪問としました。
なるべくご自分でできることはご自分でしていただくことが基本ですので、しばらくの間、生活費とお小遣いをお届けしていましたが、Gさんは糖尿病があるにもかかわらず、大量のパンを買い込んだり、いたんだものを食べては不調を訴えたりするため、ご本人とケアマネジャーと話し合い、ホームヘルパーに食費を預け、栄養管理をしてもらうことにしました。
~進んだ住環境の整備~
これまで腰痛で起き上がることが難しいFさんにケアマネジャーが利用を勧めていたベッドやトイレを「もったいない、もったいない」と受け入れませんでしたが、定期預金の存在もわかったことから、少しずつですが受け入れるようになりました。
~難しい親族からの侵害への対応~
Fさんには子どもが3人、Gさんにとっては兄と妹が遠方にいます。
お兄さんは遠方ながら、協力が得られていましたが、そのお兄さんが亡くなってからかかわり始めた妹さんは、Fさん親子にお金を無心してくるようになりました。
こうした場合、FさんやGさんが嫌がれば、権利擁護・市民後見センターとしては本人との金銭管理の契約がありますので、妹さんからの依頼は断ることができます。
ただ、Fさん親子は度々無心されているにも関わらす、「どうにかしてあげたい」と言われるのです。
「これからのお2人の生活を守る大切なお金ですよ。」とお話ししても「でも、どうにかしてあげたい!」と繰り返されると、権利擁護・市民後見センターとしてはどうしようもありません。
ケアマネジャーにも話をしてもらいましたが、だめでした。
端からみれば本人への金銭侵害だとしても、本人がどうしてもと言えば「本人の意思」を尊重することになります。
本人達にとっては「いらぬおせっかい」になるのかもしれません。
家族の中のことは、私たちの知らない家族としての長い歴史があり、さまざまな感情が入り組んで、本当にデリケートな問題で、立ち入れません。権利擁護・市民後見センターとしてもそのせめぎあいで悩む場面が多いのです。
~今後に向けて~
2人の会話を聞いていると、お互い相手をけなしているようでも、その生活を楽しんでいるような気がします。
できるだけこの生活を続けていけるよう「こころとからだの変化」に気をつけながら、見守っていきたいと考えています。