コラム6

命の値段

2009.12.28

命に値段がつけられるのでしょうか?

事故などで人が亡くなった場合、遺族は、加害者に対して損害賠償を求めることができます。ところで損害賠償金の内訳は大雑把にいうと死亡するまでの治療費や休業損害(欠勤で給与が減った等)等といった積極損害と死亡しなければ平均余命まで得られたはずの利益(逸出利益といいます・・・通常はこの逸出利益が大きい)、さらには慰謝料(入通院慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料)に分けることができます。働き盛りの人が死亡した場合には逸出利益が巨額になり、1億円を超えることもあります。ところが、重度の障害のために働けない人や平均余命に到達している高齢者の場合はどうなるのでしょう。

重度の障害のある人は、元々働くことができないので、そもそも逸出利益はないといっていいのでしょうか。平均余命を超えた高齢者もそうなるのでしょうか。結論から言うと裁判所はこれまで、このような人たちの逸出利益を認めてきませんでした。特に障害者の場合、死亡しなければ平均余命まで障害年金をもらえたはずなのですが、この障害年金すら、いわば恩恵的に支給されているものということで逸出利益として認められてきませんでした。ところが、クリスマスの日(平成21年12月25日)に青森地方裁判所で画期的な判決が出されました。事案は、重度障害者の長男が特別支援学校の寮で入浴中に死亡したという事故で、6000万円の逸出利益を認めたのです。詳しくは、ネットで検索していただきたいのですが、障害の有無や年齢で命の値段が大きく異なる社会は、そろそろ見直されるべき時期にきているのではないでしょうか。