コラム12
行き過ぎた個人情報保護【第六回】
2010.03.17
個人情報の問題は取得の段階、保管・管理の段階、第三者提供の段階で現れることは以前お話ししました。
今回は、まず、取得の段階でも問題について話を進めることにしましょう。
取得の段階とは、文字通り、個人情報を事業所などで取得するときの問題です。高齢者や障がいのある人を受け入れるとき、高齢者本人に関する情報をいろいろ取得するはずです。
ライトでも権利擁護事業を利用していただくとき契約書の氏名、年齢、自立度、病歴、収入、家族構成、等々様々な情報を取得します。このような情報が個人情報保護法で保護される個人情報であることは言うまでもありません。
それでは、このような情報を取得しようとするとき、どのような問題があるのでしょう。
ここで思い出していただきたいことが「自分に関わる情報は自分がコントロールする」ということです。当たり前のことですが、自分の要介護度、病歴、どんな年金を受給しているか、持ち家か借家か、認知症があるかないか等々といった情報が自分の知らないところで情報収集されているとしたらどうでしょう。私が認めていない限り、そんなこと許されるはずがないし、認めるにしても、その利用目的を確認することが先決と考えるのは当然でしょう。
自分に置き換えてみたときは当然のことと考えることが実際はどうでしょう、皆さんの中には、なんの問題意識もなく高齢者や障がいのある人に関わる情報を本人以外の人たちから何の疑問もなく取得していることはありませんか。
そうなのです、個人情報は取得する目的(利用目的)を明らかにして、本人から取得するとことが大原則なのです。先日、ある区で行われたケアマネージャーの主任研修でのひとコマです。
ある医療関係者から「緊急連絡先として自以外の親族の連絡先住所、電話番号を聞いてもいいのか」という質問がでました。もちろん付き添ってきた親族がいたとして、その人の連絡先をその人から聞くことは問題ありません。保護されるべき情報の本人が同意しているから当然でしょう。ところが、その情報を本人(緊急連絡先とされる親族)以外の高齢者や付き添ってきたケアマネージャーから取得するとしたらどうでしょう。例えば、ケアマネから取得したとして、医療関係者がその緊急連絡先に電話をしたとしましょう。その際、電話に出た親族から「おまえ、誰からおれの連絡先を聞いたんか!」「俺の電話番号は誰にも教えとらんぞ!責任者を出せ!」とすごまれたらどうするのでしょうか。きっと返事に窮することでしょう。
個人情報は原則として本人から取得する必要があるのです。
このように答えたら皆さんはきっと、そんなこと言ったら仕事になりませんし、緊急連絡先を知ることは当然ではないですかと反論されるでしょう。
そのような反論も当然かもしれませんが、これからお話しする例外にあたるかは疑わしいと思います。それでは、本人からの取得対する例外ですが、まず法令によって本人以外のものに対して個人情報の提供を義務付けている場合が代表格です。
具体的には虐待を受けている疑いがある場合の虐待されている高齢者本人に関する情報、虐待している養護者に関する情報等は高齢者の虐待防止及び養護者の支援に関する法律(高齢者虐待防止法)によって市町村に提供することが義務付けられていますが、このような場合がそうです。しかし、先ほどの例のように医療機関が緊急時でもないのに緊急連絡先として親族の情報を取得することを認めた法令は、私の知る限りは無いと思います。
また、人の生命、身体、財産の保護のため緊急に必要な場合等も例外にあたります。しかし、この緊急必要な場合とは、個人情報を本人から取得する時間的余裕がない場合のことで、具体的には意識不明の患者本人を緊急に治療する必要があるような場合がそれにあたります。緊急搬送された患者の生命、身体、財産を保護するために患者本人ではなく、親族に関する情報を入手する必要があるというという場合も限定されるでしょう。
それでは、このようなとき、連絡先としての親族に関する情報を入手するにはどうしたらよいのでしょう。
この回答は意外に簡単です。その情報源から親族に連絡してもらって親族の同意を得るか、親族から直接その医療機関に連絡してもらえばよいのです。やり辛いなあとお考えのあなた、考え方を変えたほうがよいかもしれませんよ。なお、先ほどのようにケアマネが医療機関等に対象者の親族に関して取得している情報を提供することは次回以降お話しする第三者提供の問題になります。