コラム14

被災地をたずねて【第1回】

2011.05.20

5月3日(火)から5月10日(火)まで、東日本大震災で被害を受けた岩手県釜石市に行ってきました。災害弱者といわれる高齢者や障がい者がどのような生活をしているのかを、この目で確かめ、相談にのるためです。私が見た被災地の現状をお伝えします。

5月4日(水)

1 釜石市の状況

午前、釜石に入る。街は釜石線釜石駅を挟み海側がひどい被災状況、山側はほとんど無傷、岬を越えた入江にある漁港の海岸側もひどい被災状況、釜石市の北側(車で10分程度)大槌町は絶句する状況。

全体的にいえることは壊滅状態の街並みと一見無傷の街並みとの落差が大きく、ここでも格差が生じている。

2 高齢者支援の状況

釜石市は人口3万9000人余り、高齢化率は33%、独居老人は3000人、高齢夫婦世帯も多く、認知症高齢者は1000人を超えていると思われる。介護保険との関係では要支援が550名程度で要介護者は少ない。

地域包括支援センターは市直営で1か所、他に保健師と事務職員のみで構成されるサブセンター(地区生活応援センター)が7か所設置されている。地域包括支援センターの人的構成は保健師1名(その他にサブセンターで4名稼働中)、社会福祉職2名(内1名は有資格者ではない)主任ケアマネージャー3人の総勢6名構成。サブセンターの1つ鵜住居地区生活応援センターは今回の大津波で5名の職員のうち2名が死亡、センターの機能は失われている。

弁護士会や司法書士会、さらには社会福祉士会との連携は図られていない。

市内には弁護士が、ひまわり公設事務所の1名を含めて2名だが、肝心の1名は事務所および自宅が被災し、現在盛岡市内に避難中で地域包括等との連携はもともと期待できない状況。一方、司法書士は被災前までは何かあったら相談に応じるということになっていたようだが、現実には対応してもらっていなかったとのこと。社会福祉士会は、沿岸地区社会福祉士会という組織が存在するようだがマンパワー不足で地域包括との連携は全く取れていない。

このようなことから、釜石地区では成年後見の利用はほとんどない模様で、昨年、市長申し立てを試みようとしたが専門職の支援もなく、地域包括もマンパワー不足で実現しなかったということ。地域包括の頼りは社協の日常生活自立支援事業だが、こちらも専門員1名で50件以上の案件を抱えていて飽和状態という状況。

震災後、地域包括支援センター職員は各避難所に足を運び、避難中の高齢者の把握に尽力中だが、避難所の移動等で未だ正確な状況把握はできていない模様。

今後、地域のコミュニティが再生できない場合、支援を失った認知症高齢者の顕在化が必至。地域包括も同様の危惧を抱いており、今後の体制を含め対応策を検討中だが、限られた人員で市長申立や市民による後見開始の申立支援を行うことは困難とのことで、専門職の継続的支援が是非とも必要と思われるし、地域包括もそれを希望している。

釜石市に限らず他の沿岸地区も同様と思われる。

3 罹災証明等の手続きについて

現在、罹災証明の申請を受け付けているが、あくまでも本人申請で支援を失った認知症高齢者や障がい者は完全に後回しの状況となっている。特に釜石市では釜石駅近くのシープラザでの受付だけで避難所に職員を派遣しての受け付けは行われていない。避難所を訪れる市の職員に避難所での受付を促してみたが、体制が整えられないとのこと。結局、支援を必要とする人々は後回しになる可能性が高いと思われる。

4 避難所の状況

私は、旧釜石商業高校の体育館に設置されている避難所で寝泊まりをしているが、物資は十分に確保されているし、地域の自治会長がリーダーシップを発揮していて、整然としている。他の避難所もほぼ同様とのこと。事実、釜石小学校に設置されている避難所は、旧釜石商業の避難所より各人の役割分担がはっきりしていて、避難所の運営のために入っている北九州市の職員は手持ち無沙汰に見えるし、体育館の中も整然と仕切られていてある程度のプライバシーも保たれている(とてもうらやましい)。

弁護士である私が寝泊まりしているため、日中の時間、避難所にいる方が適宜相談にやってくるが、明日以降は、こちらから世間話からはじめて困っていることの相談にのろうと考えている。ただ、毎日、数人が赤い旗(壊れた自宅を取り壊しても構わないとの意思表示)を持って出かけられる姿が痛ましい。

5 障がい者について

明日以降、障がい者を担当する部署を訪ねたいと思っている。