コラム26
物の価値について【第3回】
2014.07.01
そんな裁判所でも命ある生き物と、それ以外の物とで違いがあることを認めているのも事実です。
現実の裁判でも、家族同然に過ごしてきたかけがえのないペットを失ったり、ペットが重大な傷害を負って介護が必要になったりすることで、飼い主が受ける精神的苦痛に対する慰謝料が認められることがありますが、それ以外の物の場合には慰謝料などは認められていません。
このため、母親の遺品である茶碗が壊されたからといって慰謝料の請求は認められないと思われます。
この違いがどこからくるかというと、命のない物である場合、たとえ、それを失って精神的苦痛を被ったとしても、その苦痛は物を買い換えることや、それに替わる金銭補償で満足されると考えられているからです。
つまり、ペットを失った悲しみや精神的苦痛は万人に理解されるけれど、一般の物の場合はそうではないということなのです。
しかし、ペットの場合、慰謝料が支払われることがあるといっても、その慰謝料の額ときたら・・・嘘でしょうというような金額なのです。
近親者を交通事故や医療過誤で亡くした場合、精神的苦痛に対する慰謝料は最大3000万円程度ですが、場合によっては我が子以上に愛情を注いでいた愛犬を交通事故や医療過誤で亡くした場合の慰謝料は、30万円が限度といっても過言ではありません。
これでは、とても精神的苦痛を慰謝されませんよね。
以前、「なんでも鑑定団」というテレビ番組で、坂本龍馬が知人に宛てて書いた他愛もない手紙が鑑定に出され、確か1000万円くらいの評価されているのを見たことがあります。
世の中には1000万円という大金を出してでも龍馬の手紙を欲しいという人がいて、市場を形成できるということなのでしょうが、私だったら龍馬の手紙と引替にミッキーの命が助かるのなら躊躇せずミッキーの命を選びますが、皆さんだったらどうでしょう。
当然、1000万円の方でしょうか。
探査機「はやぶさ」が、宇宙に漂う「イトカワ」という小惑星から持ち帰った、数ミクロンの「ホコリより小さな鉱物」に値段が付くとするといくらになるのだろうか?
つくづく物の価値って何だろうと思ってしまいます。
【3回シリーズ(最終回)】