社協茶論Shakyo Salon
エンパワーメントを穏やかに実践していきたい(R5.12.15)
●学校の保健室のようなものを地域の暮らしに
――― 若松で「暮らしの保健室」を始めたきっかけは?
12年前、東京の新宿で訪問看護師の師匠・秋山正子さんが始めた『暮らしの保健室』に関わったことがきっかけです。介護保険は始まったけれども「要支援」の選定に漏れて困っている人たちをなんとか助けたいと考えた末に作られた団体です。当時は社会福祉協議会のことさえ知らない人も多く、医療や生活の困りごとも山ほどある中、大事に至る前に“気がねなく誰もが安心して相談できるところ”を提供するというコンセプトで始まりました。
8年前、その活動がテレビで紹介された頃、「若松の実家を活かせないか」と問い合わせがあり、ちょうど家族とともに北九州へ転勤することが決まっていた私が始めたのが、この「こみねこハウス」です。開室当初は月2回開放するこの家のチラシを配布して、当日午後に小さなイベントを開催し、ランチも利益なしのワンコインで提供するなどしてきました。
コロナ禍からはイベントを止めて月1回第4日曜日だけのランチ提供になりましたが、朝から夕方にかけて地域の方々が各々自由に来所されて楽しんでいます。スタッフは入れ替りながら今でも手弁当のボランティアです。
残念ながら役所や病院の窓口に相談しても、自宅の環境で介護するときの具体的な方法は指導してもらえません。でも、ここではプロの作業療法士やケアマネージャーが無料で教えてくれたり、ご近所さんが暮らしのアイディアを共有してくれたりと、高齢者ご本人だけでなくご家族にも細々した暮らしの困りごとの相談に乗っているので、とても安心と喜んでもらえています。
●枠組みに縛られず、種を植えて地域資源を育ててほしい
――― 「遠くの親戚より近くの友人」としての活動が望む未来は?
活動は8年目に入り、地域の方々に認知してもらえているのは嬉しいですね。90歳代になった常連のマダムが楽しみにしてくれているから閉所もできません。このように私たちが大切に見守っていることを知ってほしいし、ご自分を大事にしてほしいと思います。
私たちの基本的なスタンスは、困っていることの原因をご自身が気づいて、公の制度を利用しなくても解決策を見つけられるように相談に乗ること。気負わず在宅医療を推進し、最期まで自宅で過ごしたい人たちに寄り添いたいのです。大上段に大袈裟な理念など構えることなく、私たちの小さな活動が種となり、同じようなことをしたい人たちの背中を押せたらという思いで続けています。
社会福祉協議会には本当に小さな地域の個々の特性に目を向けた活動をしてもらえたらと思います。限界集落と呼ばれる地域が増える現実を見据え、“いまを生きる人たちの具体的な困りごと”のために動いてほしいと切に願いますし、それぞれの拠点で私たちのような活動をしている人たちと協働で活動してほしいですね。
写真左は長末さん、写真右が杉本さん
■ちょっとひとこと■
杉本さんは誰もが同じ時間を一緒に過ごせば心豊かになり、元気をもらえる暖かい陽だまりのような方です。「杉本さんと話をすると安心するので会いたい」とおっしゃるファンが多いし、私も同感です。
八幡西区地域包括支援センター在籍
・ケアマネジャー 長末里美さん
参照)
『暮らしの保健室』in若松こみねこハウス 北九州市若松区迫田町1-6
毎月第4日曜日10時〜15時開室。からだによいメニューのランチを500円で提供中。
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『暮らしの保健室』東京本部 https://kuraho.jp/