コラム25
物の価値について【第2回】
2014.06.02
ところで、命ある生き物と大量生産された車等を同じに扱うのは納得ができないとのご意見もあるでしょう。もっともなことだと思います。
もし、壊れた際の修理代より物そのものの価値が小さいとき、損害は物そのものの価額が限度だということになれば、ミッキーが車にはねられ後ろ足を骨折したため動物病院で治療を受けたとしても、その治療代は賠償されないということになりかねません。
というのも、雑種犬は物として価値がないと考えられる以上、治療費は賠償の対象とならないと言えなくもないためです。
しかし、この結論は家族同然の存在となっているペットをお持ちの方にとっては受け容れ難いことでしょう。
ところが、現実の裁判(平成20年9月30日の名古屋高裁での判決)では次のとおり判断されていて(判決文そのままで紹介します。○○は愛犬のことで、車に同乗中、追突事故で後ろ足が不自由となり、歩行を補うために犬用車イスを使うことになった事案です。)、とても納得できるものではないのです。
「○○が傷害を負ったことによる損害の内容及び金額は、○○が物(民法85条)に当たることを前提にして、これを定めるのが相当である。このことは、○○を我が子のように思って愛情を注いで飼育していたことによって左右されるものではない。
ところで、一般に、不法行為によって物が毀損した場合の修理費等については、そのうちの不法行為時における当該物の時価相当額に限り、これを不法行為との間に相当因果関係のある損害とすべきものとされている。
しかしながら、愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については、生命を持つ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認められる限度において、不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。」
この判決では、ペットが負傷したとき賠償の対象となる治療費について、必ずしもペットの時価相当額(子犬の時に購入した金額は6万5000円)に限られるべきではないとしながらも、時価相当額を念頭に置いた上で常識的に認められる程度として、結果的には購入価額の2倍程度の13万6500円(現実に動物病院へ支払った医療費等は80万円余り)を損害額と認定しています。
しかし、この裁判所の考え方によれば、もし事故で死んでいた場合には購入時の6万5000円が損害ということになっていたのでしょうし、ミッキーのように拾われた犬の場合、時価がゼロでしょうから、そんな犬のために多額の治療費をかける方がおかしいというということになるのでしょうか。
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