法人後見事業活動事例(2)
事例(2)支援員の活動に喜びを感じるとき
~定年退職をきっかけに支援員へ転身!~
前職の定年退職が近付き、「あー、いよいよ退職か。悠々自適を決め込むほどの余裕もないし、一升ビンとにらめっこしながらの人生もつまらないなー。」と思っていたところ、人づてに支援員活動の事を知り興味を持ちました。それで、社会貢献型「市民後見人」養成研修を受講し、支援員として働くこととなりました。
~声掛けにわずかに反応するHさん~
現在、私は2名の方を担当しており、そのうちの1名は、入院中の80歳を超えた認知症の男性Hさんです。最初にお会いした頃は在宅で生活されていましたが、自転車でふらっとどこかへ行っては居所が分からなくなったり、お金があれば山ほどの食糧を買ってしまい生活費が底をついたり、さらには、買った物を失くしたりと、一人で暮らしていくのは困難な状態でした。
その後、Hさんも交えた話し合いの中で、施設に入ることを何とか納得してもらい入所となりましたが、職員の目を盗んでは施設を抜け出すこともありました。
そこで、定期的に施設を訪問し、Hさんと話をする中で「この方には何が必要なのか」を考えながら対応するようにしていましたが、誤嚥性肺炎にかかり、自身で食事が摂れなくなり、現在の病院へ入院となってしまいました。後見人として、入院の手続きを行い、毎月、医療費の支払いなどを行っていますが、病状は悪化し、現在は、私の声掛けにもわずかに反応している程度です。
~お腹をチョンチョンと突いてくるNさん~
もう1名は、知的障害のある20歳代の男性で、障害者施設に入所されています。彼は、生まれながらに障害があり、ずっと施設で生活されてきました。私は、定期的に施設を訪問し、彼の様子を見守っています。最初にお会いした頃は、声を掛けてもチラッと見るだけで全く興味を示してくれませんでした。会話は殆ど出来ませんので、私も意思伝達の方法が分からず、一方的に話しかけるのがせいぜいでした。手を差し出すと握手はしてくれますが、しっかりとは握ってくれませんし、すぐ離して自分の世界に戻って行くという様子でした。
施設では、一つの簡単な作業を最後までやり遂げるという指導が行われていますが、当初、彼は1クールをやり遂げるのに、ものすごく時間がかかり、私が訪問している間に、やっと1回出来る程度でした。しかし、担当職員の根気強い指導のお蔭で、最近では2~3回は出来るようになってきました。
また、私に対しても少しずつ興味を示してくれるようになり、ある時、訓練を見ている私のこのメタボのお腹を指先でチョンチョンと突いてきました。それも何度も・・・。これには、施設の職員も驚いていましたが、私もびっくりしたと同時に、少しは心を開いてくれたのかなと嬉しい気持ちになりました。このような時に、この活動に喜びを感じます。ただし、彼は、機嫌が悪い時には、全く相手にしてくれませんが・・・。
~支援員の活動をしてみて思うこと~
私は、法人後見事業の担当支援員として活動していますので、成年被後見人に対する支援方針は、私の考えのみで決定するわけではありません。組織内での協議や関係者を交えた話し合いの中で決定し、その方針に基づいた支援を行っていくことになります。しかし、この活動を経験してみて思うことは、私たちの手助けで安心して暮らしていける人たちが少なからずいるということです。だからこそ、この活動で大きな満足感を得られるのだと思っています。