社協茶論Shakyo Salon

母校での学びを自然体で社会に恩返し(R5.8.31)

母校での学び直しをきっかけに、障害者支援事業をスタートさせた江田久美子さん。いまだにお客様が食事している様子を厨房から覗いてワクワクドキドキしていると話すカフェは、愛に溢れています。
【profile 江田久美子 氏(こうだくみこ)】
久留米市生まれ。障害者の福祉作業所「カフェ・ラポール」を立ち上げ、以降、就労継続支援事業としてや母校・西南女学院中学高校学食、北九州市立中央図書館カフェなどの運営の他、新鮮な無農薬野菜を栽培・提供する「ラポールガーデン」なども手がける。2023年8月現在、母校卒業生を中心に職員として常勤8名の他パートを含めて20名が就労。 参照) NPO法人 障害者支援要会 https://www.npo-kaname.com

●ご縁で始まり拡がった事業
――― オシャレで美味しいと評判のカフェを始めたきっかけは何でしたか?

障がい児の息子が小学3年生の頃、「障がいとはなんぞや」と学び直したのが、きっかけでしょうか。感情的ではなく理論的に学べば子どもとの関わりも変わってくるのではないかと、母校の西南女学院大学福祉学科へ編入しました。
その後、若者たちと共にとても楽しく学べたことも大きかったと思います。社会福祉士や精神保健福祉士など国家資格を取っただけでは物足りなくて、福岡県立大学社会福祉学科で修士号、さらに北九州市立大学社会システム研究科で博士号を取得しました。
県立大学で修士論文を書いていた頃、指導教官の「理論だけではなく実践したら?」というひとことが事業を始めることにつながりました。学べたこと・与えられたことを社会に返す「感恩奉仕」という卒業生なら誰もが知る母校の教えを実践しようと思ったのです。すべて計画的に実行したのではなく、やってみようかなという思いに賛同した人たちが仲間になってくれました。何も知らなかったから始められたと思います。まだ障害者自立支援法が成立する前でした。
もともと母校で栄養士の資格も取っていたので、自分にできることから始めようと障害者支援のための小さな福祉作業所「カフェ・ラポール」を開所しました。コツコツ積み重ね、ご縁がつながって今年で20年。母校の学生食堂の委託運営は10年を超え、「ウエルとばた」などに出張販売している軽食もご好評いただいています。苦労というほどではありませんが、中央図書館に併設のカフェでは価格と栄養を両立させたメニュー開発に腐心しています。

 

北九州立図書館カフェ

 

●続ける難しさを乗り越えていきたい
――― ご家族の支援も大きかったのでしょうか?

家族は自然体というのか、バタバタしている私を見守っている感じです(笑) 障がい児の兄と5歳下の弟との兄弟仲も、親と子も夫婦も距離感が大切かなと思います。時間はかかるけれども子どもは成長するのだから、母親としては彼ができないことにチャレンジしたり自立したりすることを常に見守るスタンスで接していますね。
日々反省ばかりですが、今後は事業を衰退させないように継続して次の世代に引き継ぎたいので、目標は「私がいなくなっても、何事もなく進めていける“体制づくり”」です。死ぬまでなんらかの形で社会福祉に関わり続けるつもりですけど(笑)
研修などでお世話になっている社会福祉協議会には「地域福祉権利擁護事業」をもう少し拡充・改善していただきたいと思っています。利用したい方は多いけれども「半年待ち」もあるので、ぜひ検討いただきたいですね。

 

 

■ちょっとひとこと■
いつも包み込むような温かさと時折のピリッとした厳しさとで、母のように大きく見守っていただいています。

「ラポールサポート」サービス管理責任者・管理者 社会福祉士・精神保健福祉士
楠神菜摘さん