●いくつになっても友達ができるコミュニティを育みたい
―――「ふらっとハウス」を始めたきっかけは？　
ふらっとハウスを具体的に考え始めたのは、北九州市立大学での特任教員の任期が最終となった5年目でした。大学教員のキャリアを目指すことも考えましたが、これまでの人生や北九州にUターンしてからのことを振り返ると、社会福祉士・ソーシャルワーカーとして、関西で学んだ福祉を故郷の北九州で実践して北九州を良くしたいという想いがどんどん強くなりました。特任教員になる前の私はというと、関西の大学で社会福祉を学び、そのまま関西に残って、社会福祉協議会に就職しました。社会福祉協議会では、高齢者や障害のある人の相談支援と地域のボランティア活動などの推進に従事していましたが、北九州にUターンしてからは、認知症のボランティア活動や若年性認知症と家族が運営するデイサービス「春の音」で働かせていただきながら、認知症をテーマに取り組んでいました。
「ふらっとハウス」という名には、「介護する、されるという関係ではなく、ふらっとで良い関係」などの意味があり、いくつになっても友達ができるコミュニティを目指して運営しています。特徴的なのは、スケジュールがないことや建物が日本家屋でぬくもりを感じる照明や家具を選んで、施設っぽさを感じないようにしていることです。ふらっとハウスに来ているメンバーさん同士の会話が生まれたり、楽しんだり、そっと励ましたり、何かを言うわけではなくそっと近くにいて支えてくれていたり、そんな人と人との人間関係がふらっとハウスでは日常的に生まれています。この間、ふらっとハウスはどんなところかメンバーさんに感想を伺うと、「ここは話ができて、付き合いが生まれる」「ここは気を遣わなくていいんだ」などの話がありました。運営して７ヶ月が過ぎ、少しずつコミュニティができつつあります。

●答えはそれぞれが持っている
―――　皆さん生き生きと穏やかな笑顔ですね
開所後に気づかされたこともたくさんあります。デイサービスではスケジュールがあり、レクリエーションをするのが一般的かと思います。ふらっとハウスは、スケジュールがないのでメンバーさんと、「今日何をするか」決めています。昼食の食材を買いに出かけたり、干し柿を作ったり、畑仕事をしたり、平尾台など自然豊かな小倉南区を散策したり、近所を散歩したり。そんな“普通の営みをともに育む”ことを大事にしています。
「スケジュールがないと大変じゃないですか？」と聞かれますが、ふらっとハウスを2023年7月に開設して７ヶ月が過ぎ、これまでの経験から、スタッフが何をするか決めすぎると、メンバーさんが受け身になりお客様になってしまいかねないと感じています。ふらっとハウスは「生活の場」であり、いくつになっても友達ができるコミュニティを目指しているので、メンバーさんと話したり、メンバーさんの人生経験からアイデアやアドバイスをもらったりしながら、日々を送っています。スタッフだけで決めるのではなく、メンバーさんと話しながら日々を送ることで、メンバーさんとの会話の中に答えがあると感じています。メンバーさんが「藁あるよ、みんなでしめ縄作れないかな？」と提案してくださったり、「一緒に書道をしようと思って、書道道具持ってきた」と書道道具を準備されていた方などもいます。メンバーさんの希望で昼食のメニューが変わることもありますが、生活ってスケジュール通りにいかないものなので、それもよしです。これからも、メンバーさんとともに、わいわい楽しみながら、良い1日を送っていけるように取り組んでいきたいと思います。

※ふらっとハウスは利用者のことを「メンバーさん」と呼んでいます。

■ちょっとひとこと■　　　
温和な性格でみなさんから頼られた、そんな雰囲気を持っている人。

ふらっとハウスのメンバー 沼田賢一郎さん

写真左：勅使河原さん、写真右：沼田さん

参照）
「ふらっとハウス」北九州市小倉南区南方４丁目６番３６号
ふらっとハウス
・インスタグラム　https://www.instagram.com/100_fuku
・ホームページ　https://100fuku.com
・人生BOOK　https://www.jinseibook.com