地域福祉権利擁護事業活動事例(1)
事例(1)「地域福祉権利擁護事業」から「成年後見制度」へスムーズに移行できた!
判断能力が十分でない方の権利と財産を守る方法として、契約による福祉のサービスである「地域福祉権利擁護事業」と、 法の仕組みである「成年後見制度」があります。
~初めての訪問~
Aさんは80歳の認知症のある男性高齢者。
初めての相談があったのは、担当ケアマネジャーからでした。
本人は「通帳をなくした」「盗られた」と、再発行を繰り返し、公共料金の引き落としの手続きまでしてしまうので、どの通帳にお金が入っているのかさっぱり
わからないとのことでした。
初めてお会いしたとき、なるほどズボンのポケットに10冊以上の通帳が入っていました。
的確な質問もされ、一見しっかりしている印象でしたが、説明を続けていると10分前に話したことも忘れていました。
区内に姪にあたる方がおられますが、Aさんの「もの盗られ妄想」で悩まされており、「もう関われない!」と疲れた様子でした。
~2度目の訪問で申し込み~
2度目にお伺いしたとき説明の内容はさっぱり覚えていませんでしたが、姪やケアマネジャーの勧めに納得し、本事業の申込みをされました。
~少しずつ落ち着いてきた生活~
審査会で契約を承認されてから、サービスがはじまりました。
週に1回、訪問した支援員はAさんと銀行に同行し、生活費を出金します。
生活費をお渡しすると1日で遣ってしまうことが続いたので、本人とホームへルパー事業所に了解を得、食費をホームへルパーに預けることにし、とりあえず食事がきちんととれるようにしました。
また、これまでのように勝手に預金通帳を再発行しないよう「お金や通帳のことが心配になったら、権利擁護・市民後見センターに連絡してください」と張り紙をし、電話番号を書いておきました。
しばらくの間は日に何回も「通帳を知らんか!」と電話が掛かってきましたが、「センターで大切に預かっていますよ!」と説明を繰り返すと、徐々に電話の回数は減ってきました。
~成年後見制度の利用に向けて~
Aさん宅へ何度か訪問したとき、証券会社等からの通知が山積みになっていました。
ご親族の話によるとかなりの資産がありそうなのですが、本人には全く記憶がありません。証券会社等に問い合わせても、本人の判断能力が落ちていることから後見人でないと情報は開示できないとのことでした。
制度の利用については、権利擁護・市民後見センターで紹介した司法書士が本人やご親族の相談にのりました。遠隔地なので実際的な支援は難しいけれど、大阪にいる甥との関係が良いことから、相談にのった司法書士との「複数後見」が望ましいと、Aさん本人の申立てで、司法書士が手続を行い、複数後見となりました。
~保佐人が選任されてから~
保佐人となった司法書士は、郵便物から本人の財産等の調査を行い、整理しました。
同じく保佐人である甥とも協議を重ねながら、必要のない高額な火災保険等を解約し、三社の新聞販売店と契約を取消しました。
驚いたことに、運転免許が切れているのに、そのまま運転していることが判り、保佐人は、この車の処分も行いました。
しばらくの間、支援ネットワークで在宅生活を支えていましたが、火の消し忘れ、転倒などの事故が続き、本人を交え、施設入所の検討をはじめました。
いくつかの候補の中から、本人の趣味が活かせるようなグループホームに絞り、司法書士である保佐人が同行したところ、すっかり気に入って本人が入所を決めました。
成年後見制度に完全移行
施設入所後もしばらくは本事業のサービスは続けていましたが、支援員の報告では、施設での生活にも思いのほか、早く順応しているようでした。
本人には十分な資産もあり、身上監護的なものは施設で守られており、ご親族の関わりもあることから、Aさんについては、「地域福祉権利擁護事業」から「成年後見制度」に完全に移行することになりました。
先日、保佐人である司法書士から「施設の生活を本当に楽しんでおられますよ。」と聞き、ほっとしたところでした。