法人後見事業活動事例(3)

事例(3)財産目録作成や戸籍調査・・・後見活動は初体験が目白押し!

私が北九州市社会福祉協議会 権利擁護センター「らいと」(H21権利擁護・市民後見センター「らいと」に改称)の支援員となったのは、平成19年4月のことです。
権利擁護センターでは、平成21年度から法人後見事業を開始するのに先立ち、平成20年度から社会貢献型「市民後見人」の養成が始まりました。

~社会貢献型「市民後見人」養成研修を受講~

当初は地域福祉権利擁護事業の支援員として活動しておりましたが、半年程経った時に、上司から社会貢献型「市民後見人」養成研修の受講案内がありました。
この研修を修了した後に改めて支援員の採用面接を実施するとのことで、この養成研修を修了しなければ、採用面接は受けられないが、合格すれば、法人後見事業の支援員としても活動するとの説明を受けました。
地域福祉権利擁護事業の活動だけでは時間的にも少し余裕がありましたので、断る理由もなく、すぐに申込みました。
研修内容はかなりハードでした。今まで耳にしたことがない専門用語の連続で、頭に残らず大変だったことを思い出します。
月日が経ち、周りの支援員仲間たちが少しずつ後見の仕事も受け持ち始めると、「自分はいつかなー?」と思いつつも受け持つ自信もなく、「うまく支援出来るのかな。」と不安の日々でした。

~担当するEさんについて~

「後見業務もやって欲しい。」と話があったのは、法人後見事業が始まって半年が経った平成21年10月でした。
私が担当した方(被後見人:Eさん)の申立て人は、軽度の認知症を有する80歳代後半の母親でした。母親は、自分に万が一のことがあったら、Eさんの面倒を見る人は誰もいないことを心配して家庭裁判所へ申立てをされたと伺っています。
Eさんは60歳代前半の女性で、療育手帳こそありませんがもともと知的レベルは低く、現在は、病気によりほとんど寝たきりの生活で、長期の闘病生活を送っています。
私は、以前から地域福祉権利擁護事業でEさん親子を担当していましたので、今度は法人後見事業でEさんの担当をすることになりました。

~後見人としての活動開始~

後見人として正式に選任されると、家庭裁判所へ必要書類の提出をしなければなりません。
この提出書類とは、「財産目録」や「収支予定表」など成年被後見人の財産関係の書類です。受任から2~3週間で調査して提出します。
他人の財産をきちんと調べるというのは、容易なことではなく、財産に関する手続きも大変煩雑でした。金融機関によっても、それらの手続きや出金方法に温度差があることも分かりました。
最初に行ったのは、金融機関への届け出です。
初めての事ですので、通帳を開設した支店へ電話を入れ、どのような書類を準備していけばよいかを問合せ、それらの書類を準備してから支店を訪れました。金融機関も、後見人の届け出に関しては、事例が少なくて戸惑っている感じがしました。
手続きは、一度の訪問で全てをスムーズに終えるのがベストですが、なかなかそうはいきません。焦っても仕方がないので、2~3度足を運んで処理出来れば良いのではないかと思い直し、慌てずにゆっくりと進めていきました。
そのような気持ちで行うと、あとからいろいろ必要となる申請手続きもスムーズにいき、却って良かったと思っています。こうして、私が受け持ったEさんの財産を全て拾い出し、書類を作成しました。
ちなみに、預貯金口座の名義変更等の手続きを完了したあとも、金融機関の窓口では、毎回、職員証と運転免許証の提示は求められますが、これに関しても、金融機関によって若干の温度差があるようです。

後見活動は初体験が目白押し!

~初めて経験した戸籍調査やカンファレンスの出席~

後見人の仕事として、戸籍調査も必要となることがあります。そうしたことに知識や興味のある方は、簡単に調べることが出来るのでしょうが、私のように疎い人間にはこれがまた大変な作業でした。
遠くの役所へ戸籍を取り寄せるのにも大変な手間が掛かります。近くの役所で済む予定が、戸籍を調べていくと、予想外に遠方にも親族が居ることが分かり、慌てて取り寄せることなどもありました。
家庭裁判所へ提出する書類の作成と並行して、関係各所へ連絡を取り、情報共有の場(カンファレンス)を設ける段取りも行いました。この日程調整に結構時間がかかったと記憶しています。
この場に集まった関係者は、被後見人のEさん、申立人である母親、ケアマネジャー、病院側からはドクターと看護師長、そして「らいと」の専門員と担当者である私の7名でした。
私の担当しているEさんは病院での生活を送っているので、カンファレンスは病院で行いました。
カンファレンスの中で、ドクターからEさんの病名、治療等について説明がありました。
病歴は理解していたつもりでしたが、改めて説明を聞き、「ご家族の方は大変だったろうなー。」とつくづく思いました。そして、これからは法人後見事業の担当者としてEさんの事を一生懸命に見守り、支援しないといけないという気持ちになりました。

~法人後見に携わって思うこと~

後見の業務を進めていきますと、自分ではこれまでに経験のないことに数多くぶつかります。しかし、市民後見人養成研修で社会保障制度や行政施策、法律的な知識なども少しは身に付けることが出来たので、色々な問題にも専門員と相談しながら何とか対応できているのではないかと思っています。
法人後見は自分一人で進めるのではなく、分からないことを専門員や責任者に相談しながら職務を遂行できるので、その点では、負担が軽減されているように思います。
また、支援員同士で情報交換しながら行えるのも法人後見の利点ですし、周りの方々の支援・援助でここまでやれているのだとつくづく感じているところです。
定年退職まで、まだ若干年月はありますが、その時まで、今のペースで私なりに進んでいきたいと思っています。